intermission II

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春高後インタビュー記事風(侑影)

・小説ではありません!インタビュー記事形式です。
・17/11/1段階の原作進捗で書きました。日に日に齟齬が懸念されております。




男子バレー、新時代の黎明~全日本ユース東西セッター対談~
宮侑(兵庫・稲荷崎高校)×影山飛雄(宮城・烏野高校)
 今年1月に東京体育館で開催された第○回全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称春高バレー。数多くのスター選手を輩出し、今やアマチュアスポーツ大会の中でも屈指の人気コンテンツに成長したこの大会で今年、2回戦ながら大きな注目を集めた一戦があった。高校ナンバーワンセッターの呼び声高い宮侑選手(2年)と、宮城の新星・影山飛雄選手(1年)を擁した稲荷崎高校と烏野高校の対戦は、下馬評を覆し烏野高校の勝利に終わった。全日本ユース合宿に共に選出され、互いに切磋琢磨する二人に、お互いの印象やバレー観などを忌憚なく語ってもらった。



――宮選手にはこれまでに数回インタビューをさせていただいていますが、影山選手は今回が初めてとなります。本誌読者への紹介をかねて、まずお二人のご関係について話していただけますか?

宮「飛雄くんと初めて会うたんは、去年12月のユース合宿のときですね。あんときは、俺はもう完全に初めまして。烏野って高校自体よう知りませんでした」
影山「俺は月バリとかでも見たことあったし宮さんのこと知ってました。トレセン(※味の素トレーニングセンター)で会ったときも、やっぱいた、って感じで」
宮「あの合宿は、全部で20人強くらいやったかな。俺も同世代の情報はチェックしとるし、あらかた顔も分かるつもりやったんですよ、特にセッターは。けど、飛雄くんのことは全く知らんかった」

――影山選手は宮城の強豪・北川第一中学の出身ですが、中学時代は無名に近い存在でした。ユースの関係者の話によれば、春高の宮城県代表決定戦での影山選手のプレーが目に留まったということですね。

影山「はい。そう聞いてます」
宮「びっくりしたなー、あんとき。全く知らん子おんなって思ってたら、めちゃくちゃ上手いんですよ。セットアップはもちろん、3対3とかで何やらされても平気でこなしてくる。サーブもレシーブもアタックも全部文句のつけようなくトップクラスやった。こんな子が今まで埋もれとったとか、ありえんやろって」
影山「俺全国はこの前の春高が初めてだったんで」
宮「うん。それが原因なんやろうけど、まあびびるで」

――宮選手は、そのときから影山選手に注目していた?

宮「俺だけやなくて、みんな飛雄くん詣でしてましたよ。めっちゃ絡まれとったよな」
影山「俺は絡まれたのは宮さんしか印象ないです。話しかけられはしましたけど」
宮「ちょ、それ君が鈍いだけや。聖臣くん(※井闥山・佐久早聖臣選手)とか光来くん(※鴎台・星海光来選手)とか、ライバル心むき出しやったやんか」
影山「そうなんすか。分からなかったです」
宮「まあとにかく、そんくらい上手かった。けど全然知らん子。そんであんときの飛雄くんはなんか変やった」

――「変」というと?

宮「スパイカーにめちゃくちゃ従順やったんです。こんな小生意気な顔しとるのに」
影山「してないです」

――影山選手は、初めてのユース合宿ということで、あえてそうされていたということですか?

影山「いえ、違います。癖になってて、でもその合宿のときまで自分でも気付いてなくて。宮さんに『おりこうさん』って言われたんですけど、その意味も最初分かってなかったです」
宮「飛雄くん、スパイカーの要求全部のんどったからね。たぶん、春高で初めて飛雄くん見た人はピンと来ぉへんと思います。合宿のときはなんや悪いこと言うたかなって思うてたんですけど、春高のときにはおりこうさんやめとったもんね」
影山「宮さんに言われたからです」

――宮選手の指摘がいい方向に働いた?

影山「そうですね。言われてよかったと思います」
宮「言わんかったらよかったわ。塩送ってもうた。でも飛雄くん、トラウマ持ちなんやろうなとは今も思ってます」
影山「そんなことはないです」
宮「いや、あるやん。俺分かんねん。誰に泣かされたんか言うてみ?」
影山「泣いてません」

――一方、影山選手は宮選手のことをどう思っていますか?

影山「上手いっすね」
宮「いや、もーちょい褒めて!」
影山「ジャンフロはずりぃなって思いますし、トスはやべえなって思うし。すげーっす」
宮「語彙どうにかならんの君」
影山「何考えてんだか分かんないですね。すげー選手はほかにもいるけど、宮さんは効率とか度外視することあるし、自由。対戦したときは、あんま深読みしすぎねえようにって思ってました。でも行き当たりばったりじゃねえ部分もあるから、ほんと頭疲れました」
宮「それはお互いさまやな」

――お二人の対戦の話が出ましたが、春高での対戦を振り返っていただけますか?

影山「ほんとに双子なんだなと」
宮「いや待って飛雄くんそこから振り返っていくん? 日が暮れるで」

――合宿でのお互いとイメージが変わった部分はありますか?

宮「さっき話しましたけど、飛雄くんは脱おりこうさんしとったし、顔からして違った。あと翔陽くん(※烏野・日向翔陽選手)みたいな飛び道具抱えたチームとは想像してへんから、スカウティングの時点で『何してんの!?』って」

――烏野高校が武器としているマイナステンポの速攻のことですね。

宮「テクニックのある選手って、基本は『技術面に頭のメモリを割かんでいい』っていう使い方してると思うんですよ。無理なく確実に高難易度のことができる。でも、飛雄くんはテクニックの目盛りが試合の間じゅう、全開のまま。飛雄くんは訓練で自分を慣らしとるけど、あんだけ飛雄くんのメモリ食い散らかすスパイカー(日向選手)はなかなかおらんと思います。飛雄くんが振り回されるほうとは思うてへんかった」
影山「振り回されてるわけじゃないですけど、確かに日向とも最初からうまくいってたわけじゃないです。最初の試合とか失敗しまくったし。だから、宮さんがあの速攻パクってきたときは、正気かよと思いました」
宮「なんや人聞き悪いな! パクったけどやな」
影山「最初から成功率もすげー高くて。思いつきでしょ?」
宮「せやね。ノー打ち合わせや」
影山「頭おかしいですよね」
宮「おかしないわ! 俺は自分のできることとできんことよう分かっとるつもり」
影山「なんか試合中の宮さんってガキっぽいんですよ。合宿中はもっと人食った感じだったじゃないですか。だから、そこが一番イメージと違いました」
宮「そらまあ、合宿中はガチ試合なかったし。あと俺誰でもああいう態度取っとるわけやないで、君のことおちょくっとっただけや」
影山「なんなんですか、もう」
宮「だって俺の目の上のたんこぶになるん絶対君やから」

――結果についてはどう受け止めていますか?

宮「もちろん負けたんで悔しいです。お互い手の内さらしたし、そのうえでまたやりたいですね」
影山「あの日、うちは勝ちましたけど、俺なんかちょっと変なとこ入ってて」

――変なところ?

宮「ああ、飛雄くん、ゾーンみたいなんなってたやろ」
影山「それっす。たぶん、相手が宮さんとこって意識がすげーあって、すげー集中してて」
宮「うん。見てて分かった。あの状態の飛雄くん、ほんま手ぇつけられへん感じ」
影山「あれが切れたあとの反動がすげえしんどかった。想定してたより自分がすり減ってたから、連戦なのに、ペース配分とかめちゃくちゃで。最後まで稲荷崎戦引きずった感じでした」
宮「カップ戦の怖いとこやな」
影山「今それで悩んでます」

――お二人はずいぶん打ち解けているように見えますが、仲はいいのでしょうか?

宮「よくはないよな」
影山「よくはないですね」
宮「アジアユースたぶん君と俺やろ。めっちゃ邪魔やなとは思ってます」
影山「まだ分かんないですよ」
宮「でも飛雄くん誰とも別段仲ようはないしな。あのー、あれ、埼玉のブロッコリーみたいな」
影山「千鹿谷ですか?」(※森然・千鹿谷栄吉選手)
宮「そうそう、いや、君それで分かるん失礼やで」
影山「言った宮さんのほうが失礼ですよ」
宮「まあそれはええとして、栄吉くんがおってほんまによかったなあって思って見てる」
影山「そうですか?」
宮「超ハラハラした顔でこっち見てくるんよ。飛雄くんめっちゃ守られとんで」
影山「よく分かんないですけど、あいつはすげー心配性です」
宮「飛雄くんがあぶなっかしいからオカンみたいになってしもうて」

――最後に、今年のアジアユース大会への意気込みや展望をお願いします。

影山「まず選ばれて、そんで勝ちます」
宮「飛雄くん、顔だけは頭よさそうに見えるんやけどなあ」
影山「なんか間違ってますか」
宮「いやええけど、全然。その調子でいってもらったほうがファン層かぶらんやろうし」
影山「ファン層?」
宮「飛雄くん、ほんまおぼこいよな……今アホほどモテとるんちゃうの」
影山「モテ……? いや、別に」
宮「どない思います? これ」

――お二人とも、高校生イケメンセッターとして人気を博していますよね。影山選手がそうした面で知名度を獲得されたのは、稲荷崎高校との試合以後であったと記憶しています。

影山「俺の周りは何も変わってないです」
宮「飛雄くん、女子モテ企画来んようになるで」
影山「はあ。別にいいです」
宮「もう飛雄くんには男子モテ企画回したってください。俺もアジアユース頑張りまーす」



宮侑(みや・あつむ)=兵庫県出身。稲荷崎高校2年生、セッター。中学時代から双子の兄弟・治(=出身同)とともに活躍し、中総体とインターハイではベストサーバーを受賞するなど、セッターとして以外にも輝かしい記録を残し、全国に名をとどろかせる。今年の春高バレーでは惜しくも2回戦で敗退したが、首脳陣からの評価は揺るがず、全日本ユースでも活躍が期待される。

影山飛雄(かげやま・とびお)=宮城県出身。烏野高校1年生、セッター。中学時代は宮城・北川第一中学で正セッターを務めるも全国出場の機会はなし。烏野高校進学後、牛島若利を擁する県下一の強豪・白鳥沢学園を下して春高本大会へするや、瞬く間に全国の注目を集める存在に。全日本ユースで活躍し、一気に全国区定着となるか。